BUTIQUE OSAKI

堀江美都子さん × 社長対談

  • 前編
  • 後編
  • 今回は大崎社長のコレクションの原点ともいえる、“アニメソングの女王”堀江美都子さんとの対談です。
    憧れの堀江さんを前に、ちょっと緊張気味の大崎社長。
    堀江さんが結婚式で履かれたという、ブティックオーサキの靴の話題から、対談はスタートしました。

    堀江美都子さん社長対談画像01

    ウエディングシューズが取り持つご縁

    大崎:
    本日はお忙しい中、おいでいただきありがとうございます。

    堀江:
    こちらこそお招きいただいてありがとうございます。

    大崎:
    普通は「初めまして」が最初の挨拶ですが、初対面では無いのですよね。
    以前、私のラジオ番組(「ミュージックバード・昭和ポップス玉手箱」)にゲストで来ていただいていますよね。

    堀江:
    はい。
    その節はお世話になりました。

    大崎:
    あの時は楽しかったです!!
    今日は対談ということでかなり緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。
    私事ですが、当社は今年で50周年なんです。

    堀江:
    えーっ、半世紀じゃないですか! おめでとうございます!!

    大崎:
    おかげさまでそんな節目の年を迎えますので、いろいろなお話をお聞きしたいと思っています。
    以前、ラジオでもお話が出ましたが、ミッチさんと当社とのご縁というのは、ご結婚の際にウエディングドレス用の靴をオーダーしていただいたことからだそうですね。

    堀江:
    そうなんです。

    堀江美都子さん社長対談画像02

    大崎:
    今日、ご結婚の記念写真をお持ちいただいているんですよね。
    ちょっと見せていただいてよろしいでしょうか。

    堀江:
    はい、これなんですけど。

    大崎:
    うわーっ、美しいです!! それとこのお靴は当社の製品に間違いないですよ。

    堀江:
    当時、私が雑誌か何かでブティックオーサキさんのことを知りまして、ウエディングドレスの靴を是非オーダーしたいと思って伺ったんです。

    大崎:
    ありがとうございます。そうすると原宿のお店にご来店くださって。

    堀江:
    そうです。明治通り沿いの所にあったお店に伺って、作っていただいたんです。

    大崎:
    こんな記念すべき品を作らせていただいたんですね。
    当社はその頃から芸能関係の方にご贔屓いただいていましたが、"天下の"堀江美都子さんにもご利用いただいていたとは。

    堀江:
    ですからラジオでオファーをいただいた時にブティックオーサキさんの番組とお聞きして、ああ、なんか回りまわってつながったというか、不思議なご縁を感じたんです。

    大崎:
    番組の中でも「ブティックオーサキ社長・大崎 潔」としてご挨拶しましたが、「なんであの靴屋の社長がラジオ番組、持っているの!?」って、びっくりなさったんじゃないですか。

    堀江:
    そうですね。とても不思議でした。
    私が靴をオーダーした時は先代のお父様が社長さんでいらしたので、息子さんに代が代わられたんだなあ、と察しは付きましたが、まさかラジオでお目にかかるとは思いませんでしたね。

    「質問コーナー」でミッチさんの核心に迫る!?

    大崎:
    さて、まだちょっと緊張しているんですが……。ここからは私がいろいろと質問をさせていただきます。
    この質問コーナーは対談の目玉ですのでご協力ください。
    ここにYes、Noの札を用意しましたので、これでお答えください。

    堀江美都子さん社長対談画像03

    堀江:
    はい、わかりました。

    大崎:
    それでは早速第1問です。
    「生まれ変わってもアニメソングを歌いたい」。YesかNoか?

    堀江:
    Yes。
    ウフフフ……。

    大崎:
    そうですよね。
    次に第2問。「今でもヴァイオリンが得意だ」。

    堀江:
    アハハハハ……(笑いながらNoの札を出す)。

    堀江美都子さん社長対談画像04

    大崎:
    あれ!! Noですか? ミッチさん、やってらしたんじゃないんですか?

    堀江:
    やってはいましたけれど、弾いてない時期のほうが長くなってしまって。

    大崎:
    最近はもう全然弾かれないんですか?

    堀江:
    全然なんですけれど、でもまあ、またライブで少しでも弾いたりできればいいな、とは思っています。

    大崎:
    小さい頃、頑張って演奏されている写真を拝見したことがあったので、今もやっていらっしゃるのかと思っていました。

    堀江:
    そうだったんですけど、早弾きができなくて断念したものですから。
    でもまた、やろうと思えばやれるでしょうね。

    大崎:
    そうですよ。体は覚えていますから。
    楽器って一回やっていると結構覚えていて、感覚が戻りますよね。また弾かれることを期待しています。
    さて、次です。「ものすごく体調が悪いのに歌ったことがある」。

    堀江:
    (Yesの札を上げて)はい。

    大崎:
    そうですよね。
    これはお聞きしたかったんですけれど、やっぱり人間ですから体調が悪かったりしますよね。

    堀江:
    ええ。お正月に調子を崩すことが多いですね。
    お正月って色々なところでアニメソングのイベントが多く、どうしても声が出なくなって歌えなくなって、やむを得ず口パクで合わせたこともあります。

    大崎:
    この話、公表して大丈夫ですか!?

    堀江:
    ものすごく辛くて心苦しかったんですけれど、全く出なくてどうしようもなかったんですよ。

    大崎:
    えーっ! ミッチさんでもそんなことがあるんですね。
    以前、北海道の旭川だったか、ものすごく寒い中で歌われましたよね?水木一郎さんとご一緒だったかな。

    堀江:
    ああ、2011年の2月11日、雪まつりの時ですね。

    大崎:
    あの時もすごく寒かったんで、大丈夫かなと心配したんですよ。

    堀江:
    あの時は大丈夫でした。
    デビュー以来48年間、風邪以外で声帯を壊したことはないんですが、風邪だけは困りますね。
    それにこういう高くて細い声なので、ちょっと喉が腫れただけでうまく声が響かなくなるんですよ。
    太い声の人に比べたらリスクが大きいです。

    大崎:
    そうですか。きれいな声ですもんね。
    それ故、いろいろとご苦労があるんですね……。
    次の問題に行ってよろしいですか。
    「歌詞を間違えたことがある」。さてどうでしょうか?

    堀江:
    (Yesの札を上げる)。

    大崎:
    えっ、そうですか。堀江さんほどの方でもそんなことあるんですね。

    堀江美都子さん社長対談画像05

    堀江:
    いやぁ、これまでは「堀江は絶対、歌詞を間違えない」って言われていたんですが、最近ちょっと…。
    あまりにも詰め込まれることが多くて…。
    昔の歌は間違えないんですけれど、最近の新曲が覚えにくくなっていますね。

    大崎:
    ミッチさんは絶対に歌詞を間違えない、と聞いていたので、究極の質問だったんです。

    堀江:
    (歌詞を覚えられないことが)初めはすごくショックだったんですよ。
    「私は絶対そんなことはない」って思っていたんですが、まあ、やっぱり自然の流れなのか、努力してもどうしても無理な時は少しずつ自分を許さないと、苦しくて歌っていけなくなるだろうと思ったんです。

    大崎:
    なるほど……。貴重なお答えありがとうございます。
    次は「第二の堀江美都子は誕生するのか?」。いかがでしょうか。

    堀江:
    うーん……。

    大崎:
    今は「第二の堀江美都子」といえるような人はいないと思うんですけれど、そういう人が出てきて欲しいと思うか、そうでないか。また、育てたいか。
    そういうことをすべて引っくるめてお考え下さい。

    堀江:
    これは難しいですねぇ……(Yes、Noの札を前に、微妙な雰囲気)。
    出てきて欲しいとは思いますが、「私と同じような」ということは無理だと思います。
    音楽や時代の流れを考えると、私の時のように「こんな歌を歌って」とか、「こんな風に表現して」ということはあり得ないでしょう。
    歌手としてもアニメ界での存在にしても、別の意味での「第二の堀江美都子」的な人は出てくるでしょうし、出てきて欲しいけれど、同じように歌を理解し、表現し、歌うということは難しいかもしれませんね。

    大崎:
    ご自身がどうというより、時代が違ってきちゃっていますよね、堀江さんがデビューされた頃とは。

    堀江:
    そうなんです。豊かな表現とか感情移入はないほうが、現在の演奏形態には合っているんです。
    だから情緒豊かに抑揚を持たせて、日本語を美しく歌う、というスタイルとは違ってきていると思うので。

    大崎:
    堀江さんは堀江さんの歌でいいと思いますよ。あの時代のあのアニメソングのスタイルで。
    他の人に堀江さんの歌い方や堀江さんの声は真似できないし。
    ちょっと複雑な心境ではありますが、堀江美都子は「唯一無二」ということですね。
    失礼なこと、お尋ねしてすみませんでした。

    堀江:
    いいえ。そんなことないです。
    もし自分に娘がいたとして、後を継がせようとしても同じようにはならないな、って思いますもの。

    大崎:
    そうですね!! 託してもできないものはできないですものね。

    堀江:
    反対にもっとすごい人が出てくる可能性だってありますよね。
    私とは別の表現ができたり、声が豊かだったり。
    日本人の体形も昔とは変わっていますから、声帯も変わっているはずです。
    J-POPなんか聞いても、昔だったら洋楽の外国人にしかできなかったフェイクとかアドリブとか、コブシまわしなんかを日本人がやっていますものね。
    体も声も環境も変わっているから、もっとすごいことができる人が出てくることもあると思います。

    大崎:
    堀江さんがデビューされてから50年近く経っていますから、いろいろ変わってきますよね。
    こじつけるみたいですけれど、当社も50年で随分変わりましたから、ある意味共通するところがあるかもしれませんね。
    さて、最後の質問です。
    「また、機会があったら私の番組に出演する?」。

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    堀江:
    Yes。それは勿論です。

    大崎:
    ありがとうございます!
    Noって言われたらどうしようかと思いました!
    これからもテレビとかラジオとか、他の媒体でも堀江さんとお目にかかる機会を作りたいです。
    その時は来てくださいね。よろしくお願いします。

    ミッチワールド満載のプライベートライブ

    大崎:
    ところで、今チラシを拝見したんですが、プライベートライブをなさるんですね。
    ご自分の持ち歌ではない曲も歌われるということですが…。

    堀江:
    そうなんです。一年に一度やっているんですが、その時だけは自分の持ち歌は2割くらいで、あとは洋楽やロック、J-POPのカバーですね。

    大崎:
    洋楽ですか…。

    堀江:
    はい、それもアンプラグド、アコースティックアレンジでやるんです。
    何で今頃、他人の歌を、って思われるかもしれないんですけれど、以前から他の楽曲を歌いませんか、というオファーやご要望をいただいていました。
    それと私自身が好きな歌や歌いたい歌、育ってきた音楽環境の中にあったルーツのような歌を一緒に楽しんでいただくライブです。
    一年のうちで、私が全焼できるライブなんです。

    大崎:
    ファンの方には「これ歌って欲しい」なんていう希望もあるでしょうね。
    アニソン以外を歌うって、結構勉強になって、新鮮なんじゃないですか。

    堀江:
    そうですね。
    例えばBUMP OF CHICKENにしても他の人の歌にしても、今、流行っている曲ってブレスのタイミングからして違うんです。

    大崎:
    そうなんですか。

    堀江:
    ですから、それを自分自身で体感することで、「あぁ、今の若い人たちってこんな風にブレスして、こんな風に歌っているんだ」ってわかるんです。

    大崎:
    ミッチさんほどのベテランであっても、ブレスとか歌い方とかで、新しい発見があるなんて、びっくりしました! 歌ってすごく深いですね!

    堀江:
    とても楽しいですよ。
    他の人の楽曲をオリジナルのままで歌って自分の体に入れてみて、それを咀嚼して、自分のスタイルで表現する。新しい曲を研究する面白さがあるし、私はまだ、歌がうまくなることができるんだ、っていう気持ちにもなれます。

    大崎:
    そうですよね。
    歌に幅が出て、パーセンテージが広がる。
    ミッチさんはすでに100点満点なのにもっと上を目指すと、何百点にもなりますね!

    堀江美都子さん社長対談画像07

    堀江:
    いやぁ、歌は点数じゃないので。
    「上手い」と褒められてその場で満足するだけじゃなくて、そこからもっと上を目指したいと、いつも思っています。
    欲張りなんですね!

    大崎:
    えーっ、すごいですね。
    これだけみんなから評価されていてもまだまだ足りないことがある、ってことですね。

    堀江:
    そうですね。
    でも極力、自分とは年代の違う時代の歌を勉強するようにしています。
    例えば今の若い世代に流行っている最新の曲、もしくは時代を遡って「蘇州夜曲」とか「夜来香」とか。

    大崎:
    ずいぶん昔の、戦前の曲?ですよね。

    堀江:
    そうです。そういう曲はすごくうまいと思いますよ(笑い)。
    昔の歌はとてもわかりやすいですし、今の歌は一度、自分で研究して違和感なんかを解消し、納得して歌うようにしています。

    大崎:
    私には今のお話はとても意外です。だって充分「堀江美都子の世界」を構築しているじゃないですか。
    なのにまだ、新しいものを追求するってとっても辛いんじゃないか、と思うんですけれど…。
    でも、笑っていらっしゃいますもんね!

    堀江:
    だってすごく楽しいんですよ! アニメソングの場合はアニメソング独特の、特徴のある歌唱法があるんですよ。
    なので、そうじゃない歌い方も探求、研究してみたいんです。

    大崎:
    アニメソングの歌い方の特徴とは、どんなものですか?

    堀江:
    他のジャンルとの大きな違いは「アクセント・アタック・スタッカート」ですね。
    この3つを意識して歌えば、どんな曲でもアニメソングに聞こえます。
    私が育ってきた時代の曲はそうでした.だから今流行っている曲でも、この3点を強調して歌えばアニメソングになりますよ。
    私、今、音楽大学で教えているんですけれど、学生にもそんなことを話しています。

    大崎:
    なるほど!! 勉強になります。

    堀江:
    何しろパワーがありますし、メロディにも普遍性がありますから。
    一般の音楽はファッションとして、今の時代を歌っているので一過性のものが多いですよね。
    だから時代が変わるとちょっと色褪せて見えたりします。
    でもアニメソングはものすごく普遍性がありますから、歌う側も聞く側も新鮮に感じますね。
    そもそも音楽のクオリティも高く作られているので、それもあって50年前の曲でも聞けるんですね。

    大崎:
    アニメソングの歴史を語り始めるととても楽しくて、時間が足りないですね!!
    この後は私のコレクション(笑)を見ていただきながら、改めてインタビューさせていただきます。

    撮影;尾形隆夫


    堀江美都子さんプロフィール
    3月8日生。神奈川県横浜市出身。
    趣味・特技はゴルフ、スキー、ヴァイオリン、ウィンドサーフィン。
    1969年に歌手デビュー。以来、アニメの主題歌や誰もが知っている人気キャラクターの声優、ステージ等で活躍。
    子供から大人まで幅広い層に支持されて「アニメソングの女王」と呼ばれている。
    アニメソングだけでなくオリジナル曲や他ジャンルの楽曲にも挑戦し、活動領域を広げている他、大学で後進の指導にもあたっている。

    ▼堀江美都子さんの最新情報はこちら
    http://blog.excite.co.jp/mitsuko-horie/

    堀江美都子さん社長対談画像20
  • 大崎社長渾身のコレクションをディスプレイしている社長室に場所を移して、対談再開。
    ここからは堀江さんのご主人でマネージャー、元フォークグループ「シグナル」メンバーの浅見昭男氏も
    お話の輪に加わりました。

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    コレクションと共にひも解く「堀江美都子History」

    堀江:
    (社長室のコレクションを見て)わぁ、こんなにたくさん見たことないなあ!

    大崎:
    僕のコレクター魂としては最低限でもこれくらいないと、ミッチさんに見ていただけないと思って。

    堀江美都子さん社長対談画像08

    堀江:
    すごいですね!(「なかよしケンちゃん」のEPを見ながら)これ、私持っていないかも!

    大崎:
    僕、基本的にLPレコードは全部持っているのですが、「歌のテレビ主題歌ヒットアルバム」、これは大プレミアなんですよ(笑)。

    堀江:
    そうなんですか(笑)。
    最初のベストアルバムだからかな?

    堀江美都子さん社長対談画像12

    大崎:
    で、オリジナルアルバムはこちらに…。

    堀江:
    そうです、ミニアルバムを含めて全部で9枚です。
    すごーい!

    大崎:
    これも3つ揃えるの大変なんですよ、この「歌のあゆみ」レコードシリーズって。

    堀江:
    そうなんです。レコード盤がね。4からCDになったんです。
    先にレコードで出て4からCDになって、また元に戻って1から3がCDになったんです。

    堀江美都子さん社長対談画像13

    大崎:
    (浅見さんに)それと浅見さん、お気づきいただけましたでしょうか?
    ここにこういう物があることが(と、シグナルのレコードを見せる)。

    堀江:
    あら! こんなものがある!

    堀江美都子さん社長対談画像15

    大崎:
    実は僕、シグナルのファンでもあるんです! 以前、お会いした時には言わなかったんですけれど、もしかしたらシグナルのLP、完集しているかもしれません。
    これは「20歳のめぐり逢い」。
    これを買ったのが最初だったかな(浅見さんにレコードを見せる)。
    それとこれ、ポリドールの方からいただいたんですけれど、当時のサインなんです。

    浅見:
    えーっ、こんなもの持っていらっしゃるんですか!!

    堀江美都子さん社長対談画像14

    大崎:
    僕のコレクター魂というかポリシ-としては、基本的にはミッチさんのファンなんですが、ミッチさんの愛するご主人の物も集めるのが、ファンとしての心意気だと思っています。

    浅見:
    いやぁ、畏れ入ります。

    堀江美都子さん社長対談画像19堀江さんのご主人で
    マネージャーの
    浅見昭男氏

    堀江:
    (浅見さんに向かって)えー、家にもないんじゃない?

    浅見:
    そうだね。ないよね(笑)。

    カメラマン
    とにかく社長は大ファンですよね。すごい!!

    ここでちょっとコーヒーブレイク。
    美味しいコーヒーをいただきながら、社長室狭し、と飾られている
    コレクションの数々に、ミッチさんも興味津々です

    堀江美都子さん社長対談画像16

    大崎:
    僕にとってミッチさんは別格なんです。
    本当にうまいし、何回聞いても飽きないし、こんなに歌える方は他にいないです。
    その中でも一番好きなのは「魔法のマコちゃん」なんですけれど、歌う方はものすごくパワーがいりますよね。
    パワーと言えばロボット系アニメの大ヒット曲「ボルテスⅤ」なんですが、フィリピンでもオンエアされて人気の曲ですよね!
    確か今年、現地に行かれたとか?

    堀江:
    はい、この間も行ってきました。すごかったですよ。
    また、テレビが始まって毎朝放送されています。
    一番初めにフィリピンで放送されたのが40年くらいまえで、その後も再放送されていますから、ほとんどの世代の人が知っていますね。
    でもこの曲にはフィリピンの人たちの思いとかが込められているんでしょうね、だから大事に歌わなければいけないって思っています。
    何か使命感のようなものを感じます。

    大崎:
    何でこんなにフィリピンの人たちに支持されるんだろう、という疑問がありましたか。

    堀江:
    ありましたね。
    でも多分、フィリピンの国民性というか、フィリピン人の心の琴線に触れるものがある曲なんでしょう。
    だから世代が替わっても、変わらず同じように歌われているのかなって思います。
    すごいですよ、フィリピンでの人気、グッズも大人気みたいですし。
    私も何とかTシャツとキャップ、一つずつ持って帰ってきました。

    大崎社長のコレクターとしてのポリシーとは

    堀江美都子さん社長対談画像17

    大崎:
    今のお話、インプットしておいて次のコレクションの目標、これにします!。
    ところでミッチさんに喜んでいただきたいと思って、こんなものを作ってみました。

    堀江:
    えーっ、すごい! これ何ですか?

    大崎:
    今日の対談の記念に僕からのファンレターというか、ラブレターとしてお持ち帰りいただきたいんですけれど、これ、どんなグッズがプレミアだとか、サインのバリエーションなど自分なりにまとめました。
    表紙はいただいた名刺から拡大して作りました。
    正直、この作業が一番苦労しました(笑)。

    堀江:
    ありがとうございます。
    うちの母より熱心かもしれません。

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    社長の熱い思いのこもったコレクションを紹介。
    「人生ゲーム」「初代ウォークマン」「ママレンジ」など
    未開封・未使用の品々をご覧いただいて、しばし昭和にタイムスリップ

    堀江:
    ところで色々すごいコレクションですが、将来はどうなさるんですか?

    大崎:
    誰かコレクターに引き継いでもらうんじゃなくて、「昭和記念館」的なものを作れたらいいですね。
    未開封でパッケージも完全で残っていれば昭和の文化的遺産ですよ。
    数的には切手とレコードが一番なんですけどね…。
    さてさて、ミッチさんはアニメソングの中でどの曲に一番思い入れがありますか?

    堀江:
    そうですねぇ。
    昔の歌は自分の子供みたいなものですし、新しい歌は新しい歌で歌詞の奥深さとか、それぞれに思い入れがあります。
    あえて挙げるとすれば、今一番充実して歌えるかな、と思うのは2012年3月公開の劇場版「ドラえもん のび太と奇跡の島」の挿入歌「キミのひかり」という曲です。
    それが一番かなぁ。

    大崎:
    「ドラえもん」の主題歌も、いくつも新しいバージョンがありますもんね。

    堀江:
    そうですね。
    これは東日本大震災の翌年に録音だったんですけれど、台本も作詞も作曲も素晴らしくて。
    被災地に向けてのドラえもんからのメッセージソングだったんです。

    大崎:
    アニメソングの力、というか、音楽の力って、大変なものがありますもんね。
    強いですよね。

    堀江:
    その強さをシンプルな言葉やシンプルなメロディで伝えているからこそ、余計心に残るんですよね。

    アニメソングの未来は?

    大崎:
    ところで、今後のアニメソングについてはどうお考えですか?

    堀江:
    これまで経験してきた48年間のうち、今が一番メジャーですね。
    海外からの逆輸入でアニメやアニメソングが文化として認められましたから、それに国内が驚いて認めざるを得なくなっているんです。
    昔は「あ、子供の歌だからね」という認識で、音楽的にも低く見られていましたが、それをどうにかしなきゃいけない、って頑張ってきた感じですね。

    大崎:
    オリジナル曲なんかはどういうお考えで出されたんですか?

    堀江:
    それはアニメソングだけでなく、歌手として認められたいと思ったからです。
    でも結局は全部引っくるめた自分ですからね。
    若い頃はいろいろこだわりましたけど、自分の中から出てくるものですから。

    大崎:
    なるほどね。
    ミッチさんは大学で若い人たちを指導する立場でもある訳ですけれど、これまでのご自分の経験やご苦労から見て、今の若い人たちをどうご覧になっていますか?

    堀江:
    今は裕福な時代だし、ゆとり教育の中で育ってきている世代です。
    まだ若いから仕方のない部分もあるでしょうけれど、何が本当にやりたいのか、何に夢中になれるのかがわからないみたいですね。
    この先、まだ人生長いですから、何でもわかっているという状況ではないことは理解できますが、少なくとも自分で選んで入学したのだから、その場でやれることは精一杯やって欲しいと思います。
    どんな場所、状況にいようとそれを生かすか、無駄にするかは自分次第、って、学生には言っています。

    大崎:
    僕の娘もその学生さんたちと同年代なので、おっしゃること、よくわかります。
    僕たちの時代が苦しかったという訳ではありませんが、今の子って自動的に何かして貰える、と思っていますよね。

    堀江:
    何事にも受け身なんですよ。

    大崎:
    僕らの若い頃はパソコンなんてないから、自分で努力して調べて手に入れたんですけれど、いまはコピーペーストして出してくる。
    一見、よくできていますが、自分の知識にはなりませんよね。
    現在、大学ではどのくらいのペースで教えていらっしゃるんですか。

    堀江:
    週に一日、90分授業が3コマです。270分続けてなので結構疲れますよ。
    事前準備もありますし。すごく勉強して臨むんですよ。
    大学からオファーがあった時、最初、お断りしたんです。とても体力が続かないだろうと思って。
    でも私が断ったことで別の人が行って、正しくアニソンのルーツからを教えてくれるのかな、って考えたら、やらない訳にいかなくて。
    スタートからきちんと正しく伝えたいと思ったものですから。
    学生に教える他にも、職員向けのセミナーもやっているんです。

    大崎:
    大変だけどやり甲斐のあるお仕事ですね。
    頑張って続けられたらご自身も得ることがありますよ。

    堀江:
    そう思って頑張ります!!

    大崎:
    今日はいろいろなお話、本当にありがとうございました。

    撮影;尾形隆夫


    堀江美都子さんプロフィール
    3月8日生。神奈川県横浜市出身。
    趣味・特技はゴルフ、スキー、ヴァイオリン、ウィンドサーフィン。
    1969年に歌手デビュー。以来、アニメの主題歌や誰もが知っている人気キャラクターの声優、ステージ等で活躍。
    子供から大人まで幅広い層に支持されて「アニメソングの女王」と呼ばれている。
    アニメソングだけでなくオリジナル曲や他ジャンルの楽曲にも挑戦し、活動領域を広げている他、大学で後進の指導にもあたっている。

    ▼堀江美都子さんの最新情報はこちら
    http://blog.excite.co.jp/mitsuko-horie/

    堀江美都子さん社長対談画像20