堀江美都子さん × 社長対談
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今回は大崎社長のコレクションの原点ともいえる、“アニメソングの女王”堀江美都子さんとの対談です。
憧れの堀江さんを前に、ちょっと緊張気味の大崎社長。
堀江さんが結婚式で履かれたという、ブティックオーサキの靴の話題から、対談はスタートしました。ウエディングシューズが取り持つご縁
大崎:
本日はお忙しい中、おいでいただきありがとうございます。堀江:
こちらこそお招きいただいてありがとうございます。大崎:
普通は「初めまして」が最初の挨拶ですが、初対面では無いのですよね。
以前、私のラジオ番組(「ミュージックバード・昭和ポップス玉手箱」)にゲストで来ていただいていますよね。堀江:
はい。
その節はお世話になりました。大崎:
あの時は楽しかったです!!
今日は対談ということでかなり緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。
私事ですが、当社は今年で50周年なんです。堀江:
えーっ、半世紀じゃないですか! おめでとうございます!!大崎:
おかげさまでそんな節目の年を迎えますので、いろいろなお話をお聞きしたいと思っています。
以前、ラジオでもお話が出ましたが、ミッチさんと当社とのご縁というのは、ご結婚の際にウエディングドレス用の靴をオーダーしていただいたことからだそうですね。堀江:
そうなんです。大崎:
今日、ご結婚の記念写真をお持ちいただいているんですよね。
ちょっと見せていただいてよろしいでしょうか。堀江:
はい、これなんですけど。大崎:
うわーっ、美しいです!! それとこのお靴は当社の製品に間違いないですよ。堀江:
当時、私が雑誌か何かでブティックオーサキさんのことを知りまして、ウエディングドレスの靴を是非オーダーしたいと思って伺ったんです。大崎:
ありがとうございます。そうすると原宿のお店にご来店くださって。堀江:
そうです。明治通り沿いの所にあったお店に伺って、作っていただいたんです。大崎:
こんな記念すべき品を作らせていただいたんですね。
当社はその頃から芸能関係の方にご贔屓いただいていましたが、"天下の"堀江美都子さんにもご利用いただいていたとは。堀江:
ですからラジオでオファーをいただいた時にブティックオーサキさんの番組とお聞きして、ああ、なんか回りまわってつながったというか、不思議なご縁を感じたんです。大崎:
番組の中でも「ブティックオーサキ社長・大崎 潔」としてご挨拶しましたが、「なんであの靴屋の社長がラジオ番組、持っているの!?」って、びっくりなさったんじゃないですか。堀江:
そうですね。とても不思議でした。
私が靴をオーダーした時は先代のお父様が社長さんでいらしたので、息子さんに代が代わられたんだなあ、と察しは付きましたが、まさかラジオでお目にかかるとは思いませんでしたね。
「質問コーナー」でミッチさんの核心に迫る!?
大崎:
さて、まだちょっと緊張しているんですが……。ここからは私がいろいろと質問をさせていただきます。
この質問コーナーは対談の目玉ですのでご協力ください。
ここにYes、Noの札を用意しましたので、これでお答えください。堀江:
はい、わかりました。大崎:
それでは早速第1問です。
「生まれ変わってもアニメソングを歌いたい」。YesかNoか?堀江:
Yes。
ウフフフ……。大崎:
そうですよね。
次に第2問。「今でもヴァイオリンが得意だ」。堀江:
アハハハハ……(笑いながらNoの札を出す)。大崎:
あれ!! Noですか? ミッチさん、やってらしたんじゃないんですか?堀江:
やってはいましたけれど、弾いてない時期のほうが長くなってしまって。大崎:
最近はもう全然弾かれないんですか?堀江:
全然なんですけれど、でもまあ、またライブで少しでも弾いたりできればいいな、とは思っています。大崎:
小さい頃、頑張って演奏されている写真を拝見したことがあったので、今もやっていらっしゃるのかと思っていました。堀江:
そうだったんですけど、早弾きができなくて断念したものですから。
でもまた、やろうと思えばやれるでしょうね。大崎:
そうですよ。体は覚えていますから。
楽器って一回やっていると結構覚えていて、感覚が戻りますよね。また弾かれることを期待しています。
さて、次です。「ものすごく体調が悪いのに歌ったことがある」。堀江:
(Yesの札を上げて)はい。大崎:
そうですよね。
これはお聞きしたかったんですけれど、やっぱり人間ですから体調が悪かったりしますよね。堀江:
ええ。お正月に調子を崩すことが多いですね。
お正月って色々なところでアニメソングのイベントが多く、どうしても声が出なくなって歌えなくなって、やむを得ず口パクで合わせたこともあります。大崎:
この話、公表して大丈夫ですか!?堀江:
ものすごく辛くて心苦しかったんですけれど、全く出なくてどうしようもなかったんですよ。大崎:
えーっ! ミッチさんでもそんなことがあるんですね。
以前、北海道の旭川だったか、ものすごく寒い中で歌われましたよね?水木一郎さんとご一緒だったかな。堀江:
ああ、2011年の2月11日、雪まつりの時ですね。大崎:
あの時もすごく寒かったんで、大丈夫かなと心配したんですよ。堀江:
あの時は大丈夫でした。
デビュー以来48年間、風邪以外で声帯を壊したことはないんですが、風邪だけは困りますね。
それにこういう高くて細い声なので、ちょっと喉が腫れただけでうまく声が響かなくなるんですよ。
太い声の人に比べたらリスクが大きいです。大崎:
そうですか。きれいな声ですもんね。
それ故、いろいろとご苦労があるんですね……。
次の問題に行ってよろしいですか。
「歌詞を間違えたことがある」。さてどうでしょうか?堀江:
(Yesの札を上げる)。大崎:
えっ、そうですか。堀江さんほどの方でもそんなことあるんですね。堀江:
いやぁ、これまでは「堀江は絶対、歌詞を間違えない」って言われていたんですが、最近ちょっと…。
あまりにも詰め込まれることが多くて…。
昔の歌は間違えないんですけれど、最近の新曲が覚えにくくなっていますね。大崎:
ミッチさんは絶対に歌詞を間違えない、と聞いていたので、究極の質問だったんです。
堀江:
(歌詞を覚えられないことが)初めはすごくショックだったんですよ。
「私は絶対そんなことはない」って思っていたんですが、まあ、やっぱり自然の流れなのか、努力してもどうしても無理な時は少しずつ自分を許さないと、苦しくて歌っていけなくなるだろうと思ったんです。大崎:
なるほど……。貴重なお答えありがとうございます。
次は「第二の堀江美都子は誕生するのか?」。いかがでしょうか。堀江:
うーん……。大崎:
今は「第二の堀江美都子」といえるような人はいないと思うんですけれど、そういう人が出てきて欲しいと思うか、そうでないか。また、育てたいか。
そういうことをすべて引っくるめてお考え下さい。堀江:
これは難しいですねぇ……(Yes、Noの札を前に、微妙な雰囲気)。
出てきて欲しいとは思いますが、「私と同じような」ということは無理だと思います。
音楽や時代の流れを考えると、私の時のように「こんな歌を歌って」とか、「こんな風に表現して」ということはあり得ないでしょう。
歌手としてもアニメ界での存在にしても、別の意味での「第二の堀江美都子」的な人は出てくるでしょうし、出てきて欲しいけれど、同じように歌を理解し、表現し、歌うということは難しいかもしれませんね。大崎:
ご自身がどうというより、時代が違ってきちゃっていますよね、堀江さんがデビューされた頃とは。堀江:
そうなんです。豊かな表現とか感情移入はないほうが、現在の演奏形態には合っているんです。
だから情緒豊かに抑揚を持たせて、日本語を美しく歌う、というスタイルとは違ってきていると思うので。大崎:
堀江さんは堀江さんの歌でいいと思いますよ。あの時代のあのアニメソングのスタイルで。
他の人に堀江さんの歌い方や堀江さんの声は真似できないし。
ちょっと複雑な心境ではありますが、堀江美都子は「唯一無二」ということですね。
失礼なこと、お尋ねしてすみませんでした。堀江:
いいえ。そんなことないです。
もし自分に娘がいたとして、後を継がせようとしても同じようにはならないな、って思いますもの。大崎:
そうですね!! 託してもできないものはできないですものね。堀江:
反対にもっとすごい人が出てくる可能性だってありますよね。
私とは別の表現ができたり、声が豊かだったり。
日本人の体形も昔とは変わっていますから、声帯も変わっているはずです。
J-POPなんか聞いても、昔だったら洋楽の外国人にしかできなかったフェイクとかアドリブとか、コブシまわしなんかを日本人がやっていますものね。
体も声も環境も変わっているから、もっとすごいことができる人が出てくることもあると思います。大崎:
堀江さんがデビューされてから50年近く経っていますから、いろいろ変わってきますよね。
こじつけるみたいですけれど、当社も50年で随分変わりましたから、ある意味共通するところがあるかもしれませんね。
さて、最後の質問です。
「また、機会があったら私の番組に出演する?」。堀江:
Yes。それは勿論です。大崎:
ありがとうございます!
Noって言われたらどうしようかと思いました!
これからもテレビとかラジオとか、他の媒体でも堀江さんとお目にかかる機会を作りたいです。
その時は来てくださいね。よろしくお願いします。ミッチワールド満載のプライベートライブ
大崎:
ところで、今チラシを拝見したんですが、プライベートライブをなさるんですね。
ご自分の持ち歌ではない曲も歌われるということですが…。
堀江:
そうなんです。一年に一度やっているんですが、その時だけは自分の持ち歌は2割くらいで、あとは洋楽やロック、J-POPのカバーですね。大崎:
洋楽ですか…。堀江:
はい、それもアンプラグド、アコースティックアレンジでやるんです。
何で今頃、他人の歌を、って思われるかもしれないんですけれど、以前から他の楽曲を歌いませんか、というオファーやご要望をいただいていました。
それと私自身が好きな歌や歌いたい歌、育ってきた音楽環境の中にあったルーツのような歌を一緒に楽しんでいただくライブです。
一年のうちで、私が全焼できるライブなんです。大崎:
ファンの方には「これ歌って欲しい」なんていう希望もあるでしょうね。
アニソン以外を歌うって、結構勉強になって、新鮮なんじゃないですか。堀江:
そうですね。
例えばBUMP OF CHICKENにしても他の人の歌にしても、今、流行っている曲ってブレスのタイミングからして違うんです。
大崎:
そうなんですか。堀江:
ですから、それを自分自身で体感することで、「あぁ、今の若い人たちってこんな風にブレスして、こんな風に歌っているんだ」ってわかるんです。大崎:
ミッチさんほどのベテランであっても、ブレスとか歌い方とかで、新しい発見があるなんて、びっくりしました! 歌ってすごく深いですね!堀江:
とても楽しいですよ。
他の人の楽曲をオリジナルのままで歌って自分の体に入れてみて、それを咀嚼して、自分のスタイルで表現する。新しい曲を研究する面白さがあるし、私はまだ、歌がうまくなることができるんだ、っていう気持ちにもなれます。大崎:
そうですよね。
歌に幅が出て、パーセンテージが広がる。
ミッチさんはすでに100点満点なのにもっと上を目指すと、何百点にもなりますね!堀江:
いやぁ、歌は点数じゃないので。
「上手い」と褒められてその場で満足するだけじゃなくて、そこからもっと上を目指したいと、いつも思っています。
欲張りなんですね!大崎:
えーっ、すごいですね。
これだけみんなから評価されていてもまだまだ足りないことがある、ってことですね。
堀江:
そうですね。
でも極力、自分とは年代の違う時代の歌を勉強するようにしています。
例えば今の若い世代に流行っている最新の曲、もしくは時代を遡って「蘇州夜曲」とか「夜来香」とか。大崎:
ずいぶん昔の、戦前の曲?ですよね。堀江:
そうです。そういう曲はすごくうまいと思いますよ(笑い)。
昔の歌はとてもわかりやすいですし、今の歌は一度、自分で研究して違和感なんかを解消し、納得して歌うようにしています。大崎:
私には今のお話はとても意外です。だって充分「堀江美都子の世界」を構築しているじゃないですか。
なのにまだ、新しいものを追求するってとっても辛いんじゃないか、と思うんですけれど…。
でも、笑っていらっしゃいますもんね!堀江:
だってすごく楽しいんですよ! アニメソングの場合はアニメソング独特の、特徴のある歌唱法があるんですよ。
なので、そうじゃない歌い方も探求、研究してみたいんです。大崎:
アニメソングの歌い方の特徴とは、どんなものですか?堀江:
他のジャンルとの大きな違いは「アクセント・アタック・スタッカート」ですね。
この3つを意識して歌えば、どんな曲でもアニメソングに聞こえます。
私が育ってきた時代の曲はそうでした.だから今流行っている曲でも、この3点を強調して歌えばアニメソングになりますよ。
私、今、音楽大学で教えているんですけれど、学生にもそんなことを話しています。大崎:
なるほど!! 勉強になります。堀江:
何しろパワーがありますし、メロディにも普遍性がありますから。
一般の音楽はファッションとして、今の時代を歌っているので一過性のものが多いですよね。
だから時代が変わるとちょっと色褪せて見えたりします。
でもアニメソングはものすごく普遍性がありますから、歌う側も聞く側も新鮮に感じますね。
そもそも音楽のクオリティも高く作られているので、それもあって50年前の曲でも聞けるんですね。大崎:
アニメソングの歴史を語り始めるととても楽しくて、時間が足りないですね!!
この後は私のコレクション(笑)を見ていただきながら、改めてインタビューさせていただきます。撮影;尾形隆夫
堀江美都子さんプロフィール
3月8日生。神奈川県横浜市出身。
趣味・特技はゴルフ、スキー、ヴァイオリン、ウィンドサーフィン。
1969年に歌手デビュー。以来、アニメの主題歌や誰もが知っている人気キャラクターの声優、ステージ等で活躍。
子供から大人まで幅広い層に支持されて「アニメソングの女王」と呼ばれている。
アニメソングだけでなくオリジナル曲や他ジャンルの楽曲にも挑戦し、活動領域を広げている他、大学で後進の指導にもあたっている。▼堀江美都子さんの最新情報はこちら
http://blog.excite.co.jp/mitsuko-horie/